TEL FAX
落花煎餅
初夢
と々菓
ブールドネージュ
ダックワーズ

お菓子ストーリーズ

さかもとロール③

2021/09/07


さかもとロール③

米粉との出会い・・・

「さかもとロール」の粉は、小麦粉ではなく「米粉」を使っています。「米粉」を初めて使うことになったお話です。私は、東京での修行時代、はじめは、小麦粉のロールケーキを作っていました。5年の月日がたち「ラ・テール洋菓子店」が渋谷駅の東急フードショーに出店することになりました。出店に向けて一つのメイン商品として、「米粉ロール」を出したのが、「米粉」との出会いでした。その時の「米粉ロール」の印象は、小麦粉のロールとくらべて、焼き上がりの生地は、しっとしてやわらいものでした。「米粉」は小麦粉よりも粒子が細かいため、吸水性が高い、また小麦粉と違いグルテンがでないのでやわらかい生地になります。この時に、いつか実家に帰り「ロールケーキ」をつくるなら、『米粉』を使ったロールケーキにしようと思いました。

東京時代の当時の思い出を振り返ると、とにかく働いたの一言です。渋谷駅の駅ビル出店での仕事量はすさまじいものでした。私の仕事は「米粉ロール」の生地を焼く仕事、朝5時から午後の15時まで、10時間休みなく、生地を焼いていました。そして、それから焼菓子やケーキの仕込みなど、オープンして3か月間は、睡眠時間2~3時間。半年がたちやっと4時間寝れるようになりました。この頃は、布団で眠ると疲労から深い眠りになり遅刻してしまうこともありました。ある時、起きたら朝の9時、大遅刻です。職場についたら、先輩のチーフも遅刻。今まで、遅刻なんてしたことないのに、とにかく眠く、目をつぶりながらも手を動かしていたくらいです。みんながあまりにも遅刻するので、職場仲間とは、布団で寝ると遅刻するから床に直に寝ようと話し合いました。今となっては笑い話で良い思い出ですが、その当時は、睡眠をいかに浅くして起きれるかを真剣に考えていました。

米粉は新潟産・・・

「米粉」は、米の名産地の新潟県産のものを使用しています。パウダータイプの米粉です。、新潟県が開発した二段階製法で製粉した微細米粉です。従来の上新粉より1.5倍~2倍細かく粉砕、でんぷんを壊さないように製粉しているため、ふんわりとして軽い食感のお菓子ができます。

泡立てた卵と「米粉」の粉合わせは、小麦粉と同様の粉合わせでは足りません。例えると、小麦粉の粉合わせを70回とすると、米粉は100回混ぜるイメージです。粉合わせが軽すぎるとオーブン内では膨張しますが、オーブン後はしぼんでしまします。適正な混ぜ具合ですと、オーブン内では、必要以上に膨張せずにふんわりと焼き上がり、オーブン後でも沈みません。小麦粉はタンパク質が水分と結びつき力を加えることで、グルテンという骨格が生まれます。「米粉」はグルテンがでませんので、しっかりと混ぜ、泡の周りに「米粉」をいきわたらせることで、骨格が生まれます。ただグルテンがない分、やわらかで繊細な骨格です。

私は、粉合わせの目安として、「比重」というものを使います。「比重」というのは、泡立てた卵と「米粉」を混ぜ合わせたら、カップに生地をいれ、「グラム」を計り、その「グラム」の数値を基準として、混ぜ終わりの判断をしています。基準値のよりも軽い=空気(泡)が多い。これは、まだ「米粉」が生地にいきわたっていないため、焼き上がりはしぼんでしまうと判断できます。逆に、基準値よりも重い=空気(泡)が少ない。これは、焼き上がりの生地の空気が少なくなるので、ふんわりした食感がないと判断できます。このように、「比重」、つまり自分の中での「基準値」を作ることが、美味しい生地を安定的につくることにつながっていきます。