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お菓子ストーリーズ

ダックワーズ(Dacquoise)⑦

2021/08/13


ダックワーズ(Dacquoise)⑦

オーブンはコンベクションオーブン・・・

製菓用のオーブンには大きく分けると、「平窯のデッキオーブン」と「コンベクションオーブン」の2種類に分けられます。坂本総本店では、「平窯の石窯オーブン」と「コンベクションオーブン」をお菓子ごとに使い分けています。今回、ご紹介する『ダックワーズ』は、ツジキカイさんから出ている「ベイキープロ」という「コンベクションオーブン」で焼いています。「コンベクションオーブン」とは、庫内にファンを搭載し熱風を循環させて加熱するコンベクション(対流)調理ができるオーブンのことをいいます。この「ベイキープロ」の特性は、風量(風速)、温度、スチーム(蒸気)、排気のタイミングを自分で制御できるので、スイーツ、パンとそれぞれのアイテムに最適な条件をプログラムできることです。

この「ベイキープロ」に決め手になった出来事があります。私が東京から千葉に帰り、実家の和菓子屋の一角で洋菓子をおこうと考えておりました。実家には、和菓子で使うオーブン、かなり年代物で30年以上は使っているものでした。このオーブンは、6取鉄板(54cm ✕ 39cm)が1枚入るサイズ、これが2段の平窯です。まずは、このオーブンで『ダックワーズ』を焼いて店頭に出し始めました。まずは、店頭に出すことが大事だと思ってのスタートでした。『ダックワーズ』というお菓子は、私の実家、千葉匝瑳市(そうさし)では、珍しくもあり、徐々に人気になり製造が追いつかなくなりました。元からオーブンの力量を考えたら、商品アイテムも増やすこともできない状況で、オーブンを新しく購入する段階に来ました。千葉に帰って半年がたとうとした時でした。

私の中で、一つ決めていたことがあります。オーブンは妥協しないで、自分に合った最高のものを使う。オーブンの性能が良くないと、最良の素材、最適な手順でも、最高のものは焼きあがらないと思っています。色々とオーブンメーカーを探しているうちに、製菓関係の専門誌に「ツジキカイ」さんの名前をよく見るようになりました。「ツジキカイ」さんは、オーブンメーカーとしては、老舗の企業ではないですが、石窯の素材を使かった特殊なオーブンを作っている会社。本社は埼玉県の川越市。そして、早速、連絡をとり、『ダックワーズ』を焼かせていただく約束をさせていただきました。その日は、20人くらいのパティシエがツジキカイさんのオーブンを使い試作をする日で、私が『ダックワーズ』を作りオーブンにいれようとしたら、隣にいたパティシエさんが「ダックワーズなら、このコンベクションオーブンが上手に焼けるよ」とアドバイスをくれました。そして、コンベクションオーブンにいれ、焼き上がりをみると、配合、作り方は同じなのに、お店で出しているものよりワンランク上の『ダックワーズ』を作ることが出来ました。片道2時間半の帰りの車の中、あまりの美味しさと感動で、生地だけ10個は食べました。この車中で、ツジキカイさんのオーブンを購入しようと決めた瞬間でした。

現在、このコンベクションオーブンでは、ダックワーズをはじめ、クッキー、プリン、食パンなど、多くのスイーツやパンを焼いています。そして、ツジキカイさんの売りである石窯オーブンも併用して購入して、こちらでは、ショートケーキのジェノワーズ(スポンジ生地)、パウンドケーキ、フィナンシェなど、しっとりと火は入れるけど、しっとりと水分を残したいものに使っています。