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お菓子ストーリーズ

ほまれ④

2021/10/11


ほまれ④

蜜漬け・・・

やわらかく煮あがった小豆を、水と砂糖を合わせた蜜(シロップ)に一晩漬けます。シロップに漬けることで、小豆と蜜(シロップ)の糖度を同じにします。小豆には蜜が浸み込み、蜜には小豆内の水分が移行して、糖度が同じになります。これを「浸透圧」の作用といいます。小豆を密につける『蜜漬け』という工程によって、小豆の内部まで蜜が浸み込んだ美味しい粒餡になります。

砂糖の粒子・・・

『蜜漬け』をする際、ポイントがあります。それは、「砂糖」の種類を何にするかということです。一般的に、和菓子では、上白糖を使うことが多いと思います。餡から始まり、どら焼き、カステラなど、上白糖の中に「転化糖」という成分があり、餡や生地をしっとりさせる作用があります。水分を保持する保水性です。

私もまず、「上白糖」で「蜜」をつくり、小豆を一晩『蜜漬け』にし、それを煮詰めて「粒餡」にして見ました。食べた感想として、美味しいですが、少し甘さが残る、若干のくどさがありました。次に、洋菓子で慣れ親しんだ「グラニュー糖」。「グラニュー糖」は、淡白な甘さで素材を活かします。こちらも美味しいですが、ほんの少しだけですが、甘さに切れがありません。

砂糖の製造は、さとうきびやてんさいから甘味成分であるショ糖を抽出し不純物(ミネラルなど)を取り除く製造工程を経て、結晶化したものが「白ザラ糖」、「グラニュー糖」、「上白糖」です。結晶化した粒子が大きくなるほど表面積が小さくなり、表面に存在する不純物が少なくなり、雑味がない砂糖になります。雑味がなくすっきりとした味わいの砂糖は、他の素材の風味を引き立たせることができるます。

「白ザラ糖」、「グラニュー糖」、「上白糖」の粒子の大きさを、ご説明します。

「白ザラ糖」2.2㎜

「グラニュー糖」0.5㎜

「上白糖」0.2~0.3㎜

このように、砂糖の種類によって、粒子の大きさは異なります。「白ザラ糖」の粒子は一番大きいので、一番すっきりした餡が出来ます。

鬼ザラ糖・・・

「白ザラ糖」で、『蜜漬け』した小豆を炊き上げ、餡にしてみると「上白糖」「グラニュー糖」を比べて、すっきりした味わいとなるのは、分かりました。砂糖の種類、蜜の濃度など、色々と試し、餡のベースが出来たと思いました。ただ、心のどこかで、何か引っかかるものがあいました。ずっと試行錯誤しながら、考えていたら、ふと頭に降りてきた記憶がありました。東京での修行時代に、先輩がコンフィチュール(ジャム)を試作の際、砂糖を色々と試していた時に、『鬼ザラ糖』という砂糖を試していた記憶が蘇ってきました。早速、『鬼ザラ糖』の粒子を調べたところ、なんと、「白ザラ糖」の粒子よりも大きな3.7㎜でした。

『鬼ザラ糖』3.7mm

早速、『鬼ザラ糖』を取り寄せ、『蜜漬け』して、餡を炊いてみました。出来上がった餡を食べてみると、甘味のきれがよく、雑味がないすっきりした味わい、そして小豆そのものの風味を引き立たせることができる砂糖でした。さらに、1日、そして、2日、3日立つと、さらに、すっきりとして美味しい餡になりました。洋菓子店での修行時代に、実際に使ってはいない『鬼ザラ糖』に助けられました。