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お菓子ストーリーズ

と々菓②

2023/10/04


と々菓②

と々菓の餡・・・

『と々菓』の餡は、北海道産の小豆、鬼ザラ糖、糸寒天、水飴です。『ほまれ』と同様の素材で作っています。製法も『ほまれ』と同様ですが、小豆、鬼ザラ糖、糸寒天の配分が異なります。『と々菓』の餡と『ほまれ』の餡の意味の違い、また活かし方の違いによって、餡の風味、甘さ加減、硬さ加減が異なってきます。このそれぞれの「餡」の違いは、『と々菓』の餡と「厚焼き最中」との関係性、『ほまれ』の餡と「求肥」との関係性に深く関わっています。

私、個人の考え方ですが、和菓子は、「甘さ」の文化であり、「甘さ」の足し算、引き算、そして「甘さ」を活かし方で、お菓子が成り立っていると思います。また、洋菓子は、主となる素材の「甘さ」と他の素材とのバランス(酸味や苦みなど)、調和によって成り立っていると思います。

「和菓子」・・・例として、「どら焼き」をあげます。「どら焼き」という和菓子は、生地と餡の二つで構成され、その両方に砂糖が加えられています。この砂糖の「甘さ」をどのように活かして「どら焼き」というお菓子にするか?美味しい生地、美味しい餡の「どら焼き」が、美味しい「どら焼き」とは限りません。両方の「甘さ」をどのように活かすか?生地に砂糖を多くするのか、餡の砂糖を少なくするのか、それとも逆の方がいいのか?これは、作り手の意志、作りたい「どら焼き」によってもことなります。餡の風味を活かした「甘さ」を主として、生地は卵の風味を活かした「甘さ」にすることで、餡の美味しさを押し上げ、サポートする役割になると思います。

余談ですが、以前、有名なパティシエの講習会に行った時のお話です。そのパティシエが、コンクールのために、複雑な構成のムースのケーキを試作していました。土台には、メレンゲを使い、その上にはショコラのムース、オレンジのババロワ、さらにセンターにはオレンジのゼリーをいれた構成です。最初の試作では、それぞれのパーツ単体が、どれもが最高に美味しいものをつくり、完成させました。その結果、とても美味しくないものが出来たそうです。それぞれのパーツが主張して、美味しい美味しいと言って喧嘩しているお菓子は、美味しくありません。このパーツは、甘さをおさえるフルーツ感をだす、このパーツは砂糖の「甘さ」を主張するなど、それぞれの役割を担ったことで、美味しさは生まれると言っていたのが、とても心に残っています。これは、和、洋のお菓子に両方に通じることだと思います。

「洋菓子」・・・例として、「マカロン」を上げます。「マカロン」は、まず、卵白に砂糖をいれメレンゲを作り、それに砂糖、粉末アーモンドをいれ生地を焼きます。次に、生地にクリームをサンドして完成します。「マカロン」は砂糖の配合量は、すべての素材の中で、一番多いため、生地は「甘さ」を強く感じるものになります。そのため、サンドするクリームは、フルーツの酸味を強くしたり、キャラメルなどで、ほろ苦さをだしたりして、「甘さ」の調和、バランスをとる役割があります。「生地」の「甘さ」と「クリーム」の風味のバランスを考えて、美味しくなるように、洋菓子は作っているものが多いと思います。

すっきした味わいの中に、力強さ・・

「と々菓」の砂糖では、「ほまれ」と同様に、鬼ザラ糖をつかっています。粒子が大きいため、不純物が少ないので、出来上がった餡がすっきりした上品な味わいになります。ただ、「厚焼き最中」の香ばしい風味に負けないように、すっきりした中に力強さを持ったせるようにしました。砂糖の加える量、糸寒天を加えて硬さを調節しています。水分量の多い餡は、滑らかで口どけがよいですが、「厚焼き最中」には、火にかけ水分を飛ばして、餡の風味をより出した力強い餡が適しています。

「餡と厚焼き最中」の飲み込みを同時に・・・

「厚焼き最中」を口に入れ、噛んで飲み込むまでの時間と「餡」を飲み込むまで時間が同時になるように、「餡の硬さ」を調節しています。もし、「餡」の水分量が多くやわらかい状態だと「餡」のほうが「厚焼き最中」よりも早く飲み込んでしまうので、「厚焼き最中」が口に残ってしまいます。「餡」を硬めにすることで、「厚焼き最中」の香ばしさと「餡」の風味を同時味わえ、一番の美味しさを出すことができるようになります。