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お菓子ストーリーズ

さかもとロール②

2021/09/03


さかもとロール②

砂糖は2種類・・・

「砂糖」は、2種類使います。一つは、「グラニュー糖」。「グラニュー糖」は、細かい粒状に結晶させた精製糖で、クセがなく素直な甘さ。そして、他の素材の良さを引き立たせる甘さです。日常では、コーヒーにいれる砂糖は、グラニュー糖です。

もう一つは「きび糖」です。「きび砂糖」は、「さとうきび」から作られる砂糖の一種です。きび砂糖はさとうきびの液を煮詰めて作るため色が薄茶色をしており、精製して作られる真っ白な白砂糖よりもカルシウムやカリウムなどのミネラルを多く含むまれています。グラニュー糖のように、精製されいないので、きび砂糖特有の風味コクがあり、まろやかな甘みがあります。

「さかもとロール」では、「グラニュー糖」と「きび糖」の2種類を使っています。割合としては、「グラニュー糖」100%に対して、「きび糖」8%です。比率としては、「グラニュー糖」が圧倒的に多く、「きび糖」は少しです。「さかもとロール」の素材は、たまご、砂糖、米粉、牛乳、菜種油、クリームです。その中で、量が多いものは、卵とクリーム。味の面では、卵の風味とクリームの風味を引き立たせるために、砂糖の甘さがあります。

一番初めの試作では、「グラニュー糖」のみで作りました。結果としては、「素直な美味しさ」というのが第一印象。それを、一時間後、3時間後、6時間後、8時間後と食べていくと、「素直すぎる美味しさ」に変わっていきました。「素直すぎる美味しさ」、これは私の主観で曖昧な表現ですが、「卵とクリーム」の美味しさを100%引き出していない甘さというのが感想です。そこから、「グラニュー糖」をベースにして、黒糖、メープルシュガー、三温糖、上白糖、きび糖、上白糖など様々な砂糖をプラスして、試作しました。そして「きび糖」のコク、まろやかな甘さが「さかもとロール」には、最適という結論に達しました。ほんの少しの隠し味的な存在です。

泡立ては砂糖の力を借りる・・・

卵を泡立てるには、卵だけではできません。泡立つことはできるけど、安定性が悪く、しばらく置いておくと泡はきえてしまいます。泡が消えないようにするためには、一つの素材をプラスすることで可能になります。それが、「砂糖」です。「砂糖」は、卵の起泡性によりできた泡と、強くする作用があります。スポンジ生地の配合の割合として、卵100%に対して、砂糖は50~65%で作るのが一般的です。「さかもとロール」は、卵100%に対して砂糖は54%です。

「砂糖」が多ければ多いほど、泡立ての安定感は増します。ただ、仮に80%の砂糖を入れると、もちろん甘さは増します。そして、砂糖が多いと焼き上がりの生地が重くなり、火の通りが悪くなります。これは、スポンジ生地に対してだけではありません。私の東京での修行時代の失敗として、「プリン」を作るときに砂糖を1.5倍いれて仕込み、焼いても焼いても固まらない。これは、砂糖を必要以上に入れてしまったことで、生地が重くなり火の通りが悪くなってしまい、固まりませんでした。

温度をはかり泡立てる・・・

卵と砂糖を合わせて、ホイッパーで混ぜながら、温度を上げていきます。温度は、春は36度、夏は32度、秋は36~38度、冬は38~40度と季節によって、もしくは室温によって変えていきます。変える理由は、毎日同じ状態の泡立てにしたいからです。卵の起泡性とは、温度が高いほど泡立つ力は強くなります。

ミキサーのスピードは①高速で3分、②中高速で3分、③中速で3分、④中低速で3分、⑤低速で2分を基本的な考えとしています。もちろん、基本の考えであって、泡立て具合、キメの細かさの状態をみて、ミキサーのスピード、時間の長さを変えていきます。ここでは、ミキサーのスピードと生地の状態のお話をします。①高速3分・・・生地が温かい状態の時に、卵の起泡性の効果を最大限に出します。泡の状態は、大きな泡でキメは粗いです。②中高速3分・・・少し速度を落とすことで、泡の大きさを整えながら、最高地点まで泡立てます。泡の状態は、まだ大きいです。③中速3分・・・ゆっくりと泡の状態を整えていきます。④中低速3分・・・さらに泡の状態を細かくしていきます。④低速2分・・最後に低速で回し、泡の状態を一番細かくします。

このような手順で毎朝、生地を作っています。ここでのポイントは、泡立てを最高地点に持っていき、泡の状態を細かくすることです。泡の状態を細かくする理由は、泡を細かくすることで、粉合わせをしても、泡が消えにくくなるからです。例えば、石鹸水を思い浮かべてください。石鹸水の泡、大きいと割れやすいけど、小さな泡は消えにくいです。これは卵の泡立てにも共通することです。粉合わせの時、大きな泡は消えてしまうので、焼き上がりの生地はふんわりしません。逆に細かい泡は、しっかりと粉合わせしても消えません。卵の泡の周辺に粉がいきわたり、それが熱を入れることで、泡の形を保ち焼き上がりがふんわりするのです。最高のスポンジ生地を作るスタートは、卵の泡立てを最高の状態に持っていくことです。