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お菓子ストーリーズ

ダックワーズ(Dacquoise)⑤

2021/08/09


ダックワーズ(Dacquoise)⑤

シャブロン型は特注品。ベストな厚み・・・

「シャブロン型」とは、ダックワーズ生地などを同じ厚みで作りたい時に使われる「すりこみ」型のことです。生地を絞り袋で入れた後、はみ出る部分をパレットナイフで平らにし、「シャブロン型」をゆっくりと上に持ち上げます。この「シャブロン型」は、既製品ではなく、特注品です。ネット通販や合羽橋道具街などで販売されている多くは、ゴム製のシャブロン型や金属製のものでも厚みがないものです。私が以前、修行していた「ラ・テール洋菓子店」では、既成で販売されているものより、数m厚みのある「シャブロン型」を、金属加工会社に特注で作っていただいていました。私も修行時代で作っていたダックワーズの厚さがベストだと思っているので、中村シェフに了承を得て、このシャブロン型を使わせていただいています。

この「シャブロン型」が素晴らしいところは、型に厚みがあるので、焼きあがった生地の食感を楽しめること。そして、サイドに上に持ち上げやすいように取っ手がついているので、生地にダメージを与えずにきれいに生地が仕上がります。ゴムのシャブロン型だと、やっわらかく曲がってしまうことがあるので、きれいに仕上がらない場合があります。

 

パレットナイフ・L型

出来上がった生地を、絞り袋に入れてシャブロン型に流し込み、「パレットナイフ L型」で平らにします。「パレットナイフ L型」は、金属部分がL字に曲がっているものです。生地はシャブロン型より少し山になるくらいにしぼり、しっかりとサイドまで生地がいきわたることを意識します。そして、パレットナイフL型でのします。「手早く、回数を少なく」を合言葉に、のしていきます。

 

ダックワーズの生地は配合により、強い生地、繊細な生地になります。これは、どちらが良い悪いではなく、作り手の考えの問題です。通常は、ダックワーズのメレンゲの配合卵白100に対して50~60いれるので、強い生地になります。今回、私が求めたダックワーズの生地は、ふわっと軽い食感にしたかったので、通常の配合より、かなり少ない割合です。

以前、試作品を、東京の修行時代の中村シェフに食べていただいた時、言われた言葉があります。「このダックワーズ、本当に美味しいな。メレンゲのグラニュー糖の割合、少ないな。メレンゲ弱い分、一度に沢山の量は作れないな」と言われました。師匠である中村シェフに褒めていただき嬉しかったと同時に、配合の変化、そして、作業性のことをずばり指摘されました。やはり、シェフはすごいなと思った瞬間でした。

私が製菓学校を辞めてまで、アルバイト先の「ラ・テール洋菓子店」に入った理由の一つに、中村シェフの知識と技術のすごさがありました。私は、製菓学校では、基本の技術は学べても実践の技術は難しいなと感じていました。そのため、製菓理論だけは完璧にしようと授業が終わったら先生には質問ばかりしました。しっかりと答えられる先生、自信なさげなあやふやな先生、理論的だけと的を得てない先生、少し面倒くさいそぶりをする先生、色々な人がいました。アパートに帰ってからも「お菓子、コツの科学」という製菓理論の本を読んでは、授業を振り返っていました。

そんな学校に対して、もやもやする気持ちでいたとき、「ラ・テール洋菓子店」で、「ヘーゼル」といいうメレンゲのを使った焼き菓子を包装しているとき、中村シェフに「この生地は混ぜてもグルテンはでないんですか?」と質問したら、「この生地は粉と粉糖を混ぜているから、卵白と合わせてもグルテンがでないんだ」と答えてくれました。その次に、いきなり粉と卵白をホイッパーで混ぜ合わせ、粘り(グルテン)が出た生地を見せてくれました。さらに、卵白と「粉と粉糖を合わせたもの」をホイッパーで混ぜ合わせ、さらっとした生地を見せてくれ、グルテンが出ない状態を見せてくれました。貴重な材料を、アルバイトの私に真剣に向き合って教えてくれた日のことを、20年たった今でも鮮明に覚えています。この時から、パティシエ部門の空きがでたら、学校を辞めて正式に修行をさせていただこうと思った瞬間でした。