TEL FAX
落花煎餅
初夢
と々菓
ブールドネージュ
ダックワーズ

お菓子ストーリーズ

ほまれ③

2021/10/06


ほまれ③

水を考える・・・

「専用の煮籠」を使い、小豆の形を崩さずに煮ることができたが、皮がかたく、食べると歯にさわり、口に残る日々が続きました。ある時、和菓子の講習会に行ったときに、講師の先生が、小豆を煮る『水』の「硬度」と「pH(ペーハー)について、軽く雑談のように話してくれました。講習会が終了後に、この機会は2度ないと思い、講師の先生に、小豆の皮がやわかくならないこと、煮方についての現状を伝え、『水』の「硬度」と「pH」について教えていただきました。

『水』の硬度・・・

教えていただいた内容は、まず、『水』の「硬度」。「硬度」には「軟水」と「硬水」があります。「硬水」の水では、小豆はやわらかく煮ることはできません。小豆をやわらかく煮るには、「軟水」が適しています。水は硬度が50mg/L以下の軟水で、10mg/Lに近いほどより適しているといわれています。

フランスで修行していた先輩から、こんな話を聞きました。フランスの硬水(エビアンなど)で、お米を炊いてもおいしくない。軟水のボルビックで炊くと美味しいといわれました。また、逆の話をします。テレビで、フランス産の粉を使い、日本でパンを作ると、何度やっても上手くいかなかったというシェフがいました。そのシェフはどうしても、フランスの修行時代、その粉でつくったパンにほれ込んで、日本で自分のお店を持つときは、必ずこの粉を使おうと決めていたそうです。そして、新規オープンの間近になっても、美味しいパンは作れず途方に暮れていたそうです。悩みながら、やっと答えが見つかりました。『水』だと、日本とフランスの『水』が違うからできない。『水』の性質をフランスのものに近づけ、パンをつくったら、自分が納得するパンが焼けたそうです。

この二人の話を聞いて、小豆を煮ることにも通じることがあるなと考えるきっかけになりました。そして、実際に今使っている水の水質調査を専門業者に依頼したところ、「軟水」という結果がでました。「軟水」とはカルシウムやマグネシウムなどのイオン含有量が少ない水をさします。日本の水は、ほぼ中程度の軟水(中硬水とも言う)だそうです。私の心の中は、・・・です。また、光が見えないなと。

『水』のpH(ペーハー)を変える・・・

次に、講師の先生に教えていただいたのは、「pH(ペーハー)」のことです。『水』の「pH」を、アルカリ性に近づけることで、小豆の皮をやわらかくする作用があるので、重曹を少量入れてみるといいよと、講師の先生にアドバイスをいただきました。

「pH」とは、その液体が酸性なのか、アルカリ性なのかを表す尺度です。 数値は普通「1」から「14」までの値となり、「7」が真ん中で「中性」といいます。 「pH」が「7」より小さいと「酸性」、「7」より大きいと「アルカリ性」となります。

「重曹」の「pH」はアルカリ性なので、小豆を煮る時の水に少しだけいれると皮をやわらかくする作用があります。しかし、「重曹」を使いすぎると味は悪くなるので、水に入れる「重曹」の量には、注意が必要です。

講師の先生にいわれた通り、水に少量の「重曹」をいれて小豆を煮籠に入れて煮てみました。待つこと約1時間。煮籠から小豆を取り出して、口に入れ噛んでみました。『やわらかい』の一言です。噛んでも皮と中身がすっと噛みきることができ、すっと飲み込めました。小豆の形が残り、すっと口の中でなくなる納得のいく小豆が煮あがりました。長かったですが、諦めずにやってきてよかった。これで、やっとスタートラインに立つ資格を得た瞬間でした。