TEL FAX
落花煎餅
初夢
と々菓
ブールドネージュ
ダックワーズ

お菓子ストーリーズ

ほまれ②

2021/10/02


ほまれ②

小豆を煮る・・・

1日目(小豆を水に一晩つけた状態)

小豆を水に漬けた状態

小豆を一晩水につけることで、当日煮る時、熱水の浸透がよくなり、均一に煮あがります。

2日目(小豆を煮る)

小豆にふくまれる「渋」

①鍋に小豆を入れ、かぶる程度の水を加えて火にかけます。沸騰したら、水を差して湯の温度を50度以下に下げます。この作業を「びっくり水」といいます。「びっくり水」とはお湯の温度を一気に下げる事で表面の加熱が一時的に抑えられ、ゆっくりと小豆の中に吸水されるため、皮の固い小豆もムラなく炊くことができます。

小豆は皮が固く、中身は柔らかいので、ただ煮るだけだと、皮と中身で水の吸収度合が異なります。小豆の中身に水を吸わせやすくなる頃には皮がすっかり柔らかくなり、中身が十分に水を吸う前にもっと柔らかくなってしまい、皮が破けやすくなり、中身が出てしまいます。そうならないために、「びっくり水」をいれ、いったん温度を下げます。できるだけ、小豆の中身を出さないことで、小豆の風味を残すことができます。

②小豆をザルに移し、水をどんどん注いで「渋(小豆に含まれる苦味など)」を洗い流します。この工程を渋切りと言います。この工程を丁寧に行うことで、すっきりとした旨味のある「餡」になります。上の画像の茶色部分が「渋」です。

③「渋切り」をして、新しい水をいれ①と②の工程を繰り返します。しっかりと沸騰させ、「渋」を出し、小豆の皮のシワが完全に伸びたら、皮、中身に十分に吸水されたサインです。吸水されると、煮る前の小豆の約2.5倍の大きさになります。

「渋切り」は、『ほまれ』の餡では、2回行います。お菓子によって異なりますが、「渋」の切り具合で、出来上がりの風味が異なってきますので、求める味に応じて変えいきます。

本煮・・・

「本煮」とは、渋切りをして、求める味のベースが決まったら、小豆専用の煮籠を使い、小豆をやわらかくなるまで、約1時間煮ていきます。小豆の上に蓋をすることで沸騰しても小豆が動きません。そのため皮がつぶれたり破れたりしないので、きれいな形に仕上がり、粒の食感を楽しめるようになります。『ほまれ』は、粒の食感を楽しむ菓子なので、いかに粒を残した状態で煮るかが、美味しさの鍵です。

(専用の煮籠)

専用の煮籠

私が、東京の「ラ・テール洋菓子店」に修行に行く前に、半年間だけですが、実家の坂本総本店で働く機会をえました。その時は、主に落花煎餅の製造にたずさわっていました。そして、合間の時間に、本を見ながら独学で、粒あんを上手に煮る方法を研究していました。その時は、専用の煮籠の存在も知らず、サワリ(和菓子でいう銅鍋)をつかい煮ていました。何度やっても、小豆の皮は破れるし、小豆の皮は硬い状態で煮あがります。10回、20回のレベルではありません。100回近くやったと思います。

その当時、上野にあるどら焼きの名店、「うさぎや」の粒あんを食べたとき、粒は残り、皮はやわらかく、口の中で邪魔をせず、風味が最高の粒あんでした。この時代は、ユーチューブなどもなく、インターネットも、それほど浸透していませんでしたので、本での情報がメインでした。その頃、よく見ていたのが、「製菓製パン」という専門誌です。ここに、餡の作り方など掲載されていると、何度も読み返し、試作を重ねていきました。そして、見つけたのが「専用の煮籠」です。早速、合羽橋にある道具専門店に問い合わせをして、「専用の煮籠」を取り寄せ、小豆を煮てみました。煮てみると見事としか言いようがないくらい、粒がしっかりと残った状態で煮あがりました。

出口が見えない・・・

やっとできたと思い、一粒食べてみました。しっかりと煮えているけど、皮が硬いのです。出来たと思った気持ちが、真っ逆さまに落ちていくようで、出口のない迷路のようでした。実家にいる半年間では、「専用の煮籠」までしか辿りつけませんでした。まだ、先は長い・・・