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お菓子ストーリーズ

さかもとロール④

2021/09/12


さかもとロール④

油脂をあわせる・・・

ロールケーキなどのスポンジ生地は、粉合わせのあと「油脂」混ぜ合わせます。「油脂」とは、バター、クリーム、牛乳、サラダ油、キャノーラ油などを指します。ここでの「油脂」を入れる理由は、生地をしっとりさせるためです。以前、私が修行していた東京のお店では、バター、牛乳の「油脂」に、はちみつを一つの鍋にいれ、50度まで温めてから混ぜ合わせます。この「油脂」は、卵の水分と『乳化』することで、オーブンで焼いても「水分」が蒸発しにくくなり、しっとりした生地にさせる効果があります。

『さかもとロール』では、「油脂」には、「牛乳」と「キャノーラ油」を合わせたものを使っています。一般的に、「油脂」にはバターのみ、もしくは、バターと牛乳をあわせたものを使うことが多いです。私が、「バター」を使わずに、「キャノーラ油」を使う理由をお話しします。「バター」は固形油脂と言われていて、とても風味が豊かなのが特徴ですが、バターを入れた生地は、冷蔵ショーケースにいれると、少ししまった硬さになります。「キャノーラ油」は、液状油脂といわれ、常温、冷蔵庫、どちらでも液体です。そのため、「キャノーラ油」を入れたロール生地は、冷蔵ショーケースに入れても硬く生地はしまらず、やわらかい状態を保つことができます。ただ、「キャノーラ油」は「バター」のような豊かな風味はありません。今回、「さかもとロール」は、卵とクリームの風味をいかしたものにしたかったので、風味があまりない「キャノーラ油」を使い、余計な風味を足しませんでした。このように、「キャノーラ油」を使うことで、冷蔵商品でも生地がやわらかく、余計な味を出さずに、全体の引き立て役になる存在です。

低温殺菌牛乳・・・

 

「牛乳」を、ロール生地に使う理由は、水分たすことです。焼き上がりの生地の水分量を最適なものにするために、試作をしながら量を決めました。風味においても、「キャノーラ油」と同様に、卵とクリームの風味を引き立てるように、すっきりした味わいの「低温殺菌牛乳」を使っています。

低温殺菌牛乳とは、その名称の通り「低温殺菌」によって作られた牛乳のことです。日本では牛乳の殺菌は「超高温瞬間殺菌法」が主流です。

  • 低温長時間殺菌法:63~65℃を30分間保持する殺菌法
  • 超高温瞬間殺菌法:120~150℃を1~3秒保持する殺菌法

生乳らしさ・・

一般的に低温殺菌牛乳のほうが、高温殺菌牛乳よりも生乳らしい味わいを楽しめるといわれています。理由は、高温殺菌牛乳の場合はごく短い時間であるが120~150℃で殺菌するためタンパク質変性が起こりやすいが、低温殺菌牛乳の場合は65℃前後で殺菌するためタンパク質変性が起こりにくいからです。ただ、殺菌能力は、高温殺菌よりも劣るため賞味期限は短めとなるので、低温殺菌牛乳は生乳に近い甘みを味わえるのです。

素材の役割・・・

「キャノーラ油」、「牛乳」も油脂分というカテゴリーでいうと、「バター」「クリーム」とくらべて、高価でもなく、単体では風味の濃さは劣りますが、ケーキというものは、メインになる素材、サブになる素材があります。引き立て役の素材とお互いが役割をはたして、「美味しさ」が生まれると思っています。
これは現在私が試作しているお菓子のお話です。赤く色鮮やかなベリーのムースをショーケースに並べたいと思っています。試作で美味しい生地、美味しいベリーのムース、美味しいベリーのジュレ、そして、ベリーを引き立たせる美味しいバニラのババロアを組み合わせようと当初、考えていました。今まで、集めた製菓の本を紐解き、どれも美味しいと思うパーツをつくり、それを組み合わせてケーキを作りました。結果として、美味しくないの一言。パーツは美味しいのです。でも、組み合わせてケーキにするとバランスが悪く、どのパーツも美味しいと主張して喧嘩してしまう。そして、結局なんのケーキ食べているの?という感想です。
「さかもとロール」も、ロール生地とクリーム、2つの組み合わせですが、どの素材を主張すか、どのような風味にするかで美味しさも変わってきます。